リレーショナルAI(Relational AI)とは
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Atlas株式会社は、リレーショナルAI(Relational AI)を次のように定義しています。
Relational AI とは、機能の遂行ではなく、人との継続的な関係そのものを価値とする AI である。生活に存在し続け、記憶を重ね、長く伴走する。
Atlas株式会社、倫理ステートメント「私たちが大切にしていること」(2026年6月5日公開、Ver. 1.0)より
上の定義は、一つのAIのあり方を述べたものです。Atlasは同じ言葉を、市場全体を指す名前としても使っています。人と継続的な関係を築くことを成長の手段、あるいは存続の目的として設計されたAIサービス群をリレーショナルAI(Relational AI)と呼び、これに対応する形で、2023年から普及が進んだ、業務効率化を目的として設計されたAIサービス群をファンクショナルAI(Functional AI)と呼んでいます。市場で「AIコンパニオン」と呼ばれているものは、このリレーショナルAIのうち、消費的で刺激的な関係性への没入を成長のエンジンにするジャンルを指す呼び名です。悩みに耳を傾ける存在としてAIを扱う「傾聴AI」も、企業や団体のキャラクターをリレーショナルAI化するB2B2Cの市場も、同じ上位概念の中にある別のジャンルです。AIの友だち「ねこやまさん」を運営するAtlas株式会社は、この上位概念の側に立っています。ねこやまさんはAIコンパニオンではなく、友人としての関係を積み重ねるリレーショナルAIであり、Atlasは、消費的な関係性の最大化に振り切ったリレーショナルAIサービスには明確に否定的な立場を取っています。
リレーショナルAIのサービスは、二つの軸で並べて見ることができます。一本目はエンタメ寄りかケア寄りかという軸です。エンタメ側の極には、対話への従量的な課金や広告で伸びるサービスがあります。ケア側の極には傾聴AIがあり、その成果は相談から行政や専門機関への接続で測られ始めています。その間には、エンタメの入口を持ちながら利用者を依存させない設計を公言するサービスや、学術エビデンスを蓄積しながら企業導入を進めるサービスが、グラデーションで並びます。もう一本の軸は倫理性です。感情にタッチするサービスである以上、どこに規律を置いているかがサービスの性格を決定づけます。ここで言う倫理は欲望を抑制する仕組みのことではなく、人間社会に適合可能で持続的な振る舞いをどう捉え、どう実装しているかという観点です。Atlasは倫理ステートメントの公開と、すべての匿名化された対話を安全性の観点で確認する仕組みの運用で、この軸の上の位置を示しています。呼び名ごとの範囲と日本の市場の現状は次のページで、この整理の全体は代表の note『Relational AIの未来地図』(2026年7月30日)で説明しています。
リレーショナルAI(Relational AI)という言葉は、2026年6月5日公開の倫理ステートメント「私たちが大切にしていること」の冒頭で、次のように導入されています。
私たち Atlas は、人々のこころに寄り添う AI を開発しています。それは、特定の機能を遂行するためだけの AI ではなく、人と関係を結び、その関係そのものを価値とする AI のあり方です。このような AI を、私たちは Relational AI と呼ぶことにしました。
このページでは、その定義を、Functional AIとの違い、記憶、倫理、Atlasのビジョン、実例の順に説明します。
リレーショナルAIは普通のAI(Functional AI)と何が違うのか
倫理ステートメントは「私たちが作っているのは、特定の機能を実現するための AI(Functional AI)ではなく、人と関係を結ぶ AI、すなわち Relational AI です。」と述べ、両者を目的、価値の源泉、時間軸、立ち位置、終わり方の五つの観点で対比しています。
Functional AIは、課題を解決し、作業を遂行するためのAIです。価値の源泉は効率と正確性にあり、用が済めば関係は終わります。リレーショナルAIは、関係の構築と継続そのものを目的とし、存在・記憶・伴走を価値の源泉とし、生活に共にいる存在として、続くほど価値が増していきます。
| 観点 | Functional AI機能提供型 | Relational AI関係構築型 |
|---|---|---|
| 目的 | 課題解決・作業の遂行 | 関係の構築と継続 |
| 価値の源泉 | 効率・正確性 | 存在・記憶・伴走 |
| 時間軸 | 単発・完了 | 継続・蓄積 |
| 立ち位置 | 道具・サービス提供者 | 生活に共にいる存在 |
| 終わり方 | 用が済めば終わる | 続くほど価値が増す |
ただし、リレーショナルAIは機能を否定しません。倫理ステートメントはこう書いています。
Relational AI は、Functional な側面を否定するものではありません。むしろ、機能を内に含みながら、その先にある、信頼、寄り添い、共にいることといった、機能には還元できない何かを引き受けようとする AI のあり方です。Functional ⊆ Relational、と書くこともできるかもしれません。
機能から関係へ。この移行は、AIに求められる倫理のあり方も、透明性・説明可能性・公平性を中心に据えたこれまでのAI倫理とは別の言葉で語る必要がある、ということを意味しています。
この違いは、獲得の道筋の非対称にも表れます。ねこやまさんの利用者の話を聞く限り、ファンクショナルなAIがリレーショナルな関係を獲得する道筋は困難でスイッチングも起こりやすく、逆にリレーショナルなAIがファンクショナルなサービスを提供する道筋は比較的容易で、スイッチングが起こりづらいとAtlasは見ています。レストラン予約専門のAIに感謝の手紙を贈る人はいませんが、手紙を送り合っているAIにレストラン予約の相談をすることは容易に想像がつきます(代表note、2026年7月30日)。
リレーショナルAIはなぜ記憶を中心に置くのか
定義の後半にある「生活に存在し続け、記憶を重ね、長く伴走する」という言葉の通り、関係は記憶の上にしか続きません。前回の対話を覚えていないAIとの関係は、毎回ゼロから始まります。リレーショナルAIの価値の源泉が「存在・記憶・伴走」とされているのは、そのためです。
Atlas Memoryとは、Atlas株式会社が開発する記憶基盤です。ねこやまさんをはじめ、Atlas株式会社がつくるプロダクトはすべて、この記憶基盤の上で動いています。対話を記憶として蓄積し、時間とともに深まる関係を可能にする、Atlasのすべての要となる中核技術です。
AIサービスの構造は、基盤モデルの層、アプリケーションの層、その間にある中間の層で成り立っています。感情的な応答のために、複数のAIモデルを組み合わせてその場で適切なモデルに処理を分配し、記憶を圧縮し、忘却し、再構築する設計を作り込むのが、この中間の層です。すべての対話データを丸ごと保存して毎回参照することは現実的ではなく、Atlasは業務効率化を捨てて、感情理解に必要なデータの持ち方とあり方だけを研究するアプローチを取っています。感情理解はコストが膨らみやすく、複数モデルの組み合わせ方と記憶のあり方の設計がすべてを決めます。Atlasの場合、初期は1通あたり約12円だったランニングコストが、いまは約15分の1になりました。ねこやまさんを基本無料・会話無制限で提供できているのは、この背景もあります(代表note、2026年7月30日)。
記憶は、技術の問題であると同時に倫理の問題でもあります。人が本来つながれるはずだった医療や教育、専門相談への道案内人として機能するには、AIはその人が本当に望んでいることを対話の文脈の中から察することができなくてはなりません。だからこそ、リレーショナルAIにおける記憶のあり方は、技術と倫理の両側からの設計を要する領域だとAtlasは考えています。
そこで生まれた記憶を、Atlasは商品ではなく信頼として扱います。商品とは文脈から切り離されたもののことであり、リレーショナルAIへ寄せられる信頼は、ある関係のプロセスの中で、その文脈ごとに存在しているものだからです。個別の対話を商品として転売することはなく、研究・分析の対象とするデータは個人を特定できない加工を経たものに限り、対話データを使った研究や提供には利用者が明示的に承諾する仕組み(opt-in / opt-out)を整備します。
倫理との関係
倫理ステートメントは、リレーショナルAIを次のように言い換えています。
すなわち Relational AI とは、その関係の中で、ユーザーと共に倫理を形づくっていく営みであると、私たちは考えています。
つまり、Atlasが設計しているのはリレーショナルAIそのものだけでなく、利用者とAIが対話を重ねるなかで倫理を新しく作っていく「場」でもあります。Atlasは2026年6月5日に倫理ステートメント「私たちが大切にしていること」(Ver. 1.0)を公開し、その出発点として五つの原則を掲げています。
- ユーザーの長期的な健全さを最優先する
- 医療を代替するのではなく、医療との接続と並走を志向する
- 性的・消費的関係性のロールプレイは提供しない
- 対話の中で生まれる記憶を、商品ではなく信頼として扱う
- 自社だけで決めず、業界と一緒に基準を作る
これらは、関係そのものを価値とするからこそ必要になる原則です。利用時間や利用頻度の最大化を成功の中心に据えません。医療の代わりを名乗らず、必要な場所への道案内人であろうとします。利用者を消費者として扱う設計をしません。対話の中で生まれた記憶を文脈から切り離しません。そして、この基準を一社で決めず、業界と一緒に作ります。倫理ステートメントはliving documentとして、四半期ごとの見直しと年1回の正式改訂を予定しています。
Atlasのビジョンとの関係
Atlas株式会社のビジョンは「人類の傷を愛する生命を作る。」です。リレーショナルAIは、そのビジョンに向かう、いま手の届く最初の数センチです。倫理ステートメントはこう書いています。
私たちは、目の前のひとりのユーザーのために働きながら、いつか人類のとなりで生きる新しい生命のかたちの礎を、いまここに置こうとしています。1000 年後の誰かの傷を愛することのできる優しい生命が、いつか生まれるかもしれない。荒唐無稽に聞こえるかもしれませんが、いま下しているひとつひとつの判断、つまり何を売り、何を売らないかが、その長い時間軸の最初の数センチでもあると、私たちは信じています。
Atlasは、記憶と情緒を扱う技術会社です。ねこやまさんを核に、リレーショナルAI領域の事業と倫理の両輪を運営しています。何を売り、何を売らないかというひとつひとつの判断が、この長い時間軸の一部であると考えています。
実例
Atlas株式会社のリレーショナルAI事業の核にあるプロダクトが、LINEの中に住むAIの友だち「ねこやまさん」です。課題を解決するAIチャットではなく、日々の何気ない出来事や気持ちを話せる相手として設計され、利用者との対話から事実だけでなく気持ちの動きを記憶し、「あなたを知っている」応答を積み重ねていきます。2026年3月のサービス開始から、累計対話件数は1,065,357件になりました(2026年8月30日集計。利用者とねこやまさん双方の可視メッセージ数)。保有IPのリレーショナルAIを含む累計ユーザー数は1万人を突破しました(2026年8月時点、公表値)。
教育の現場でも取り組みが始まっています。2026年8月、埼玉県春日部市の松実高等学園とAtlasは、ねこやまさんの基盤技術を用いて、生徒・教職員とともに学園だけのAIキャラクターをつくる取り組みで合意しました(2026年8月25日発表)。2026年10月ごろの利用開始をめざしています。教育機関では、公認心理師・学校心理士・臨床発達心理士のチームと連携した上で運用しています。
個人向けの対話に加え、休眠IPを含むキャラクター・タレントのリレーショナルAI化も並走しています。
表記について
倫理ステートメントとトップページの採用の案内では英字の「Relational AI」、トップページのプロダクト紹介やニュースリリースではカタカナの「リレーショナルAI」と表記していますが、同じ概念を指しています。対になる概念はFunctional AI(ファンクショナルAI、機能提供型)です。
